眼科医より ~視力低下は現代人の『もうひとつの生活習慣病』~


じつはいま、現代の日本人のほとんどが仮性近視にかかっているといっても過言ではありません。

生活や仕事のなかで、急速に普及し始めている携帯電話やパソコンそれに携帯ゲーム機など、これらを操作する時間が非常に多くなった現代人は、目を酷使し、疲れさせてしまい、多かれ少なかれ視力を低下させているのです。  

私たちの目は、リラックスした状態(筋肉が緩む状態)で遠くが見えるように作られています。ところが、近くを見るときには、毛様体という目の筋肉を使って水晶体の形を厚くし、光の屈折を上げて、焦点を近くに引っ張ってきます。このように近くを見るときは、毛様体が緊張した状態になります。近くを見る生活が続くと、毛様体は常に緊張を強いられて本来の機能を失うため、水晶体の厚みを変化させることができなくなるのです。この状態が習慣的に続くと目は次第に回復力を失っていきます。やがて、視力は元に戻らなくなり、固定的な視力の低下を呼び込んでしまいます。  

これらは大人の場合だけではなく、子供たちの場合にも同じことがいえます。読書やゲームばかりして、遠くを見る習慣を失ってしまった現代っ子たちは、仮性近視にはじまり真性の近視へといたる危険な坂道をいつ転げ落ちてもおかしくない状況にさらされています。

視力の低下はもう、『生活習慣病』だと心得るべきなのです。

とすれば、一時的にせよピントの調節ができなくなった目をケアして、その回復をうながしてやらないかぎり、視力の低下に悩むいっぽうなのです。

目のケアをし、視力を回復させる方法は、毛様体のコリをとり柔軟にすることからはじめなくてはなりません。遠くと近くに視点を動かす目のトレーニングは、近視の改善に最も有効なのです。 

このような目のトレーニングと生活習慣の改善を行うということは、すでにメガネやコンタクトレンズで視力を矯正している方にも一過性の視力低下にかなりの改善効果を発揮します。毛様体筋のコリをほぐすことや眼筋の運動能力の向上の結果、ふたたび調節機能が回復してくるのです。  

先に、視力の低下は生活習慣病だと述べましたが、逆にいえば、これらの回復訓練によって目のコリをほぐし運動能力の向上をしっかりつづければ、現代人の視力を低下させている悪しき生活習慣も、そう怖いものではなくなるのではないでしょうか。 

視力がいったん低下すると、もう向上しないと思い込まずに、生活習慣の改善と目のトレーニングを心がけることをおすすめいたします。

 

福岡市中央区 眼科専門医 院長